仮想通貨の広がりに関するまとめ:仮想通貨は何でも証券化を促進する。

  仮想通貨が応用を広げています。そこで仮想通貨の応用についてまとめます。

 ユヴァル・ノア・ハラリ著「サピエンス全史」によれば、私たちホモ・サピエンス(現生人類)の大繁栄を支える力は虚構(あるいは神話)を社会で共有する力だという。実質的には紙切れでしかない紙幣を受け取るため、私たちは日夜を問わず働き続けられる。これは社会全体が紙幣に対して同じ虚構を共有することにより初めて実現できる。 

(日経新聞 2017/07/11 (経済教室))

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

 

 

仮想通貨とは?

 仮想通貨とは国による保証のない通貨のことです。中でもbitcoinが有名ですが、他にもイーサリアム、リップル、ライトコイン、イーサリアムクラシックなど多数の仮想通貨があります。

 仮想通貨の先駆けであるbitcoinは、block chain技術による分散公開台帳により通貨の取引が記録されることで通貨として運用されています。block chain技術の詳細は割愛しますが、ポイントは

  • 世界中で使えること
  • 海外送金の手数料が安いこと

 一つ目は、仮想通貨がインターネットを使ったシステムで運用されており、特定の国に依存していないため、世界中で使うことができます(支払える店舗があるかどうかは別ですが)。

 これは、旅行に行くときすごく便利です。例えば、日本からアメリカに旅行するとき円をドルに交換しますが、このとき結構高い交換手数料を払う必要があります。仮想通貨ならば日本で持っている仮想通貨をアメリカでもイギリスでも使うことができます。

 二つ目は、世界規模のシステムで仮想通貨が運用されているためです。日本からアメリカに送金(銀行振込)する場合、二千円~五千円の手数料がかかりますが、仮想通貨ならばそんなものがかかりません。

 

仮想通貨は何故広がっているか?

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(日経新聞 2016/12/18 ビットコイン取引最高11月15兆円超 9割が中国

 

 仮想通貨は便利ですが、なんだか胡散臭いと思う方が殆どでしょう。それでも、仮想通貨は広がっています。何故でしょうか? 利便性以外に二つのポイントがあります。

  • 国の通貨よりも仮想通貨の方が信用できる場合がある
  • 投資として儲かる可能性がある

 一つ目、通貨の信用は国が保証しています。円ならば日本国政府がその価値を保証しています。だからこそ、安心して貯金をすることができます。ところが、不安定な国ではその通貨を信用できないことがあります。例えば、内戦中のシリア、政府軍と反政府軍が戦いを続けています。政府が倒されてしまえば、通貨の価値はゼロです。これに比べれば、仮想通貨の方がまだマシという考えで、自国通貨を仮想通貨に換金する人々がいます。

 二つ目。FXってやったことありますでしょうか?日本円を海外の通貨と交換して、日本円が値上がりしたらそれを日本円に買い戻すと儲かる、という財テクの一つです。仮想通貨も通常の通貨と交換する価格が、上がったり下がったりします。上手いタイミングで売り買いをすれば、儲かるのです。特に今は仮想通貨が右肩上がりに値上がっていますので、今仮想通貨を買っておくと儲かる可能性が高いと思う人が多いです。

 この投資というキーワードは、仮想通貨の今後を考える上でとても重要です。

投資とは?

 投資で真っ先に上がるのは株でしょう。会社が株式を発行して、これを買うと配当金をもらうことができるというものです。

 例えば、あなたが10万円である会社の株を買って年間5千円の配当を受け取ると、年率5%の利益を得ることができます。最近の定期預金の利率が0.1%程度ですから、それと比べて無茶苦茶見返りが多いわけです。

 また株価も時間とともに上下するので、上手いタイミングで売り買いすれば儲かります。

 一般に株価は、その会社の業績が良ければ、高くなると言われています。これって不思議だと思いませんか?

 会社の業績が良くても配当は上がらないことが殆どです。株価が上がる理由は本来ないのです。

 それなのに、なぜ株価は上がるのでしょう?それは、皆が業績が良ければ株価が上がると思っているからです。おかしな理屈ですが、次のようにして株価が上がります。

  1. 皆が株価が上がって欲しいと思っている
  2. 業績が良ければ株価が上がると神話が広まる
  3. 業績が上がれば、2の神話に従いみんなが株を買う
  4. その結果、株価が上がる

 投資の対象は、株のほかにREIT、金、マンションなど様々なものがあります。

仮想通貨が作る新しい投資

www.nikkei.com

仮想通貨を活用した資金調達が急拡大している。2017年に入り海外を中心に70以上の企業が独自の仮想通貨を発行。ネット上で個人などに販売して800億円強の資金を調達した。「新規仮想通貨公開(ICO=Initial Coin Offering)」と呼ばれ、従来の資本市場の枠組みにとらわれない新しい手法として注目を集めている。

 4月に米ベンチャー、グノーシスが数分で10億円強の調達に成功したのを皮切りに、5月末には米ブレイブ・ソフトウエアがわずか1分足らずで40億円相当の資金を得た。6月に入るとスイスのステータスがICOとしては過去最大規模の300億円超を集めたとして話題を呼んだ。

 

ベンチャー企業が成長すると、 IPO(Initial Public Offering:株式公開)と言って株式を売り出します。株式の代わりに仮想通貨を売り出すのがICO(Initial Coin Offering)です。利点は3つです。

  • 仮想通貨を使っているのでコストが安い
  • 原理的に証券会社を使う必要が無いので、その分さらにコストが安い
  • コストが安いため、一口当たりの価格が安いコインを発行することができ、幅広い投資家から資金を集めることができる

 なかなかうまい仕組みです。

 特に大切なのは最後の点です。従来の株だと、取引単位は10万円~100万円と高額であることが殆どです。これが千円から投資できるのであれば、いろんな人が投資することができるでしょう。

 つまり、仮想通貨を株・証券として使うと取引単位価格が下がって、より広い人が投資ができるのです。例えば、不動産を証券化したREITというものがあります。また企業が資金を集める債券というものがあります。あるいは決算に使う手形というものもあります。このような様々な金融商品が仮想通貨に置き換わり、さらに新たに様々な物が証券化していくパワーを仮想通貨は秘めています。

 

まとめ

 株、REIT、債券など様々な投資物が存在する。これらの売買には多くの手数料が発生するため、取引単位価格が高い。仮想通貨は圧倒的なコストの低さにより取引探知価格を引き下げ、様々な人が投資できるようにする。これにより、様々な物の証券化が進む。

 

補足

  上のように考えると、仮想通貨を実現する仕組みがブロックチェインである必要はない、ことが分かる。投資の参加者が「通貨」として認識できるものであれば、仕組みは何でもよい。