コト消費はネットにつぶされる

まとめ

 シェアリングサービスへの注目もあり、コト消費ビジネスが期待されています。

 しかし、私はコト消費の将来性を信じていません。ネットとの相性が非常に悪いからです。

 コト消費ビジネスのマーケティングはネットに頼らざる得ないのですが、ネットは商品サイクルを極端に短くします。寿命の短いコト商品に明るい未来を見ることはできません。

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夏の風物詩と言えばかき氷

 昨年2017年の夏はかき氷が大流行でした。台湾からアイスモンスターが表参道にやってきたり、各地の有名なかき氷屋さんがTVやネットで特集されたりしました。またインスタ映えするかき氷の特集記事なんていうのもありましたよね。

 今年はみなさんかき氷を食べに出かけているのでしょうか?今年はかき氷ブームは終わってしまったように感じます。流行り廃りの早い日本ですからね。

 

 ネットの影響で以前よりもっと流行り廃りが早くなっています。

 マーケティング的には、人々に商品を認知してもらうことが購買の第一歩です。そして購買してもらったら次はリピートしてもらう、これがモノを売る基本です。

 昨年のかき氷の場合、例えばアイスモンスターのかき氷だけが流行ったというわけではなく、様々なお店のかき氷全体が流行りました。特定のかき氷ではなく、かき氷一般が認知されたということです。そのためリピートは、様々なかき氷を食べ歩くという人が多かった。つまり特定のかき氷をリピートする人が少なかった。昔は、どこそこの何が良いというようにある特定のものがリピートされていましたが、今はそうなっていません。

 こういうリピートを皆がするのは、ネットの影響だと思っています。二匹目のドジョウをネットが求めるためです。

 アイスモンスターのかき氷がキッカケとなって、かき氷って美味しいねというつぶやきがネットに上がると、すぐにネットで拡散されていきます。これをファーストステージと呼びましょう。するとすぐにかき氷特集の発信が始まります。いわゆる「東京で食べるべきかき氷10選」とかいうやつです。発信する人間もアイスモンスターだけでは他の人と差別化できないため、他のかき氷屋を調べて「10選」だの特集を始めます。これをセカンドステージと呼びましょう。これを見た人は「10選」の中からいくつかを食べ歩く(つまりかき氷全体としてリピートする)ようになります。これをサードステージと呼びましょう。サードステージに参加した人は、「10選」のかき氷の情報をネットにあげ、拡散されていきます。こうして主だったかき氷屋に多数の人が生き尽くすと、それをネットで発信する価値がなくなります。これをフォースステージと呼びましょう。

 サードステージになるとそのカテゴリ全体として、いわゆるバズる状態です。ネットに発信するために商品を消費します。しかしネットへの発信は「いいね」が目的ですから、人より先んじる必要があります。サードステージでは人々は大忙しです。いち早くお店に行ってすぐに情報をネットにあげる。この忙しさが流行を加速します。フォースステージに向かって速度を速めていき、あっという間に廃れます。

 

 「モノ消費からコト消費へ」、これはビジネス界の合言葉になっています。内閣府もそういうレポートを出しています。日本をはじめ先進国にはモノが溢れていて人々はもうモノを欲していない、これからは体験を売るのだという話ですね。シェアリングサービスなんかも参戦してきて、「コト消費をめざせ」という掛け声が良く聞かれます。

 このコト消費は、怪しい話ばかりで、私は疑ってかかった方が良いと思っています。成功事例も迫力の無いものばかりです。

 アップルのiPhoneを事例に、アップルはモノではなくコトを売っているという人がいますが、いやアップルはiPhoneというモノと、アップストアでアプリというモノを売っているんだと考えるのが妥当でしょう。アップルが提供している体験があるとすれば、みんなと同じiPhoneを私も持っている、というコトです。これは昔の物売りと同じです。最新機種を持っていて嬉しいということですから。

 コト消費が抱える最大の欠陥は、かき氷と同じで流行り廃りが激しいことです。

 「体験」なんてフワフワしたものをマーケティングすることは難しい。何が良いのか、そのアピールポイントを消費者に委ねるとになるためです。ですから、実際は、ネットの口コミ・拡散・まとめサイトによる「10選」を使ったマーケティングになるでしょう。すると、さきほどのファーストステージからフォースステージまでを一気に駆け抜けて、流行り廃りの激しいものになると思います。そういう長持ちしない商品は扱いづらいのです。