コインチェック社のゴタゴタから学ぶこと

 

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 仮想通貨の取引所コインチェック社が、620億円相当の暗号通貨「NEM」を不正に奪われたとする事件、色々と考えることが多い。

 

(1)仮想通貨は本当に無くなる

coincheck.com

仮想通貨取引を行う際の注意点

・仮想通貨は、サイバー攻撃等により、全部又は一部を消失する可能性があります。

 (コインチェック社ホームページより抜粋)

 

  取引の注意点として、一応ホームページに、サイバー攻撃によって、仮想通貨が奪われるぞと書いてはありますが、普通本当になくなるとは思わないわけで。でも、本当になくなるんですね。賢くなりました。

 

www.huffingtonpost.jp

 約款次第では、コインチェック社はユーザに損失を補償する義務はない可能性があります。しかし、460億円を日本円で26万人に返す方向で考えているようです。

 

(2)仮想通貨が広がっている

 補償の範囲が26万人いるというのも驚きです。

 日本の人口は1.27億人くらいですから。人口の0.2%がコインチェック社で「NEM]を買っていたということになります。

 

(3)仮想通貨で遊んでいる人はお金持ち

 一人当たり18万円(=460億円÷26万人)という金額をどう考えればいいのでしょう。

 まだまだ怪しげな仮想通貨のしかもマイナーな通貨に10万円以上突っ込むというのはどんな人たちなのでしょう?生活に困っているというより、ギャンブルで遊ぶ余裕のある方なのでしょう。

 

(4)ノミ行為は仮想通貨の新しいゲーム

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その後のコインチェック社とPoloniexとの取引においても、大量に存在していたであろう顧客からの買い注文や売り注文が都度都度処理されているようにも見えません。つまり、顧客からの売り注文も買い注文も、決済せず自社のシステムの中で完結させているのです。コインチェック社の中にある顧客の預かり資産もコインチェック社の自己勘定の資産も一緒になって、相場の板の中で顧客の売りと買いが相殺される、いわゆる「ノミ行為」が長らく行われてきたのではないかと疑われます。

 

 ノミ行為とは、客が「NEM」の購入注文を出したとき、コインチェック社では何もせず「NEM」を買ったふりをしていたということです。仮想通貨の取引でノミ行為が違法であるかどうかは知りませんが、なかなか面白い発想だと思います。

 

 仮想通貨というのは、もともとなんの価値もないものです。取引に参加すれば、誰かが得をしてその分誰かが損をする、ゼロサムゲームです。コインチェック社も、客の注文に対して何もしなくても、ゼロサムゲームを維持し続けることも可能だったかもしれません。所詮マイナーな仮想通貨ですから、取引量も莫大なものではありません。そう思うと、コインチェック社というゲーム盤の上で、客にゼロサムゲームで遊ばせて手数料を稼ぐのも可能でしょう。

 

(5)460億円の保証金はどこから?

 さて、損害の補償のため、コインチェック社は460億円を用意しなければなりません。どうやって用意するのでしょう?

 コインチェック社の資本金は0.92億円。460億円が工面できる会社には思えません。普通は、株主にお金を出してもらう(増資)、あるいは銀行にお金を出してもらう(借金)のどちらかでしょう。会社を売ってしまうという手段もあります。例えばSBIやDMMにコインチェック社を補償費込みで売ってしまうのです。これなら、コインチェック社の株主は利益すら出るかもしれません。

 仮に何らかの手段で金を工面しても、コインチェック社は倒産ギリギリに追い込まれるでしょう。そうなると、コインチェック社の口座にあるマネーは戻ってこないでしょうね。

 

(6)政府は困っている

 日本政府は、電子マネーを普及させようとしています。中国と比べて圧倒的に日本は電子マネーの使用率が低いのが気に入らないようです。

 (電子マネーと仮想通貨は違うのですが)電子マネー/仮想通貨を推進して、日本初のベーションを起こしたいと政府は考えています。そのため、電子マネーの規制に対して、日本政府は消極的です。

 うまく仮想通貨が育っていくことを望んでいたはずですが、ここにきてコインチェック社の不祥事が起きました。なんとか火消しをしないといけないわけですが、どんな打ち手があるでしょうか?

 一番マイルドなのは、ユーザの啓蒙でしょう。取引所の口座に仮想通貨をいれたままにしてはいけません、自分のウォレットにすぐ移しましょう、というキャンペーンをすることはできます。逆に一番ハードなのは、取引所の認可に高いハードルを設けることです。例えば、自己資本が100億円ないと認めないなど。

 

まとめ

 仮想通貨の値上がりのニュースを聞くと、オランダのチューリップの球根が非常に高値で取引された話を思い出します。価値のないものに価格がつくと、何を取引しているのか分からなくなります。 

チューリップ・バブル - Wikipedia

 

 チューリップと違って、仮想通貨はサイバー攻撃でなくなったりするので厄介です。リスクを減らすため、ユーザが今からできることは二つでしょう。

  1. 取引所の口座に通貨をいれたままにしない
  2. コインチェック社から出金できるなら、すぐ出金

 

追記

2018年2月2日

仮想通貨取引所「コインチェック」から580億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」が不正流出した問題で、金融庁は1日、同社に対して2日に資金決済法に基づく立ち入り検査を実施する方針を固めた。同社が顧客から預かる資金の管理や安全システムが十分だったかを確認する。(毎日新聞)

  コインチェック社に立ち入り検査が入ったようです。遅いよ。

 コインチェック社は、ユーザに補償をすると言っていますが、それが本当に可能であるのかこれではっきりします。

 

2018年3月8日

 仮想通貨交換業者3社が登録申請の取り下げました。

 金融庁が、匿名性の高い仮想通貨を取り扱う業者に業務改善命令を出したのが大きい。これはビットコインのようなメジャーな仮想通貨では稼げる余地が少なく、業界がマイナーで怪しい仮想通貨で儲けようとしていたことを意味する。ババ抜きは終盤にさしかかっている。

 登録申請取り下げを伝えたのはビットステーション(名古屋市)、来夢(三重県鈴鹿市)、ビットエクスプレス(那覇市)。いずれも2017年4月の改正資金決済法施行前から運営している「みなし業者」。金融庁はコインチェックの事件を機に登録審査を厳しくしており、今後、申請を自ら取り下げる業者が相次ぐ公算は大きい。

 金融庁は同日、仮想通貨交換業者7社に改正資金決済法に基づく行政処分を出した。業務停止命令の対象はFSHO(横浜市)、ビットステーション。業務改善命令は登録業者2社を含む5社。コインチェックは1月29日以来、2度目の改善命令になる。

(日経新聞2018年3月8日)

 

おまけ

 半年ほど前、VALUなる打ち上げ花火が上がり、明るく光って消えていきました。今でもVALUに金を突っ込む人はいるのでしょうか? 仮想通貨とVALUには多くの共通点があり、仮想通貨のいくつかはVALUのようになっていくのだと思います。

 「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言います。賢者を目指したいものです。

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